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確かに元々顔立ちがホストっぽいから、すれすれのラインを行ってはいるけど。
でも、そこが良いのよ。どれだけ見てても飽きない顔。釣り気味の眉も、長い下まつげも、薄い唇も完璧。その唇からちらりと覗く八重歯が、ほんの少しの隙を感じさせてバランスを取ってる。
「まあ、そっすね」
勤めてたホストクラブが突然閉店した時に、派手なスーツは殆どなくしちゃったみたい。最後に持ってた黒のスーツも、バレンタインに刺された時に血まみれになって、病院で捨てられちゃったし。
だから、面接と今日のディナーに備えて、新しいスーツを買ってあげた。
正確にはスーツじゃなくてジャケパンスタイル。グレーのジャケットに、黒のパンツ。くすんだブルーのシャツを合わせて、ネイビーのピンストライプのネクタイ。
面接先がカジュアルでどうぞ、ってことだから、ビジネスカジュアルにした。新卒でもないのに紺スーツもないし、紺スーツのフレッシュマン然とした男にエスコートされたくないわよ。
いずれ上下揃いのスーツが必要になったら、その時はその時で、ね。
「あー……」
「どうしたの?」
「いや、これ着たら……もう来週面接かって……」
何を唸ってるのかと思ったら。
「そうね、来週だわ」
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