いじめられっ子だった私は悪役令嬢となってさえ、貫き通さねばならないのです！

「私、ルアンナ。あなたは？」

　うかがい見るようにしながら彼女は答える。

「レーナです。……あの、もしかして、貴族の方……？」

「いいえ？　ちょっと儲かっていて、お父さんがお金をかけてくださったの」

　ほっとしたような顔をしたあと、彼女は警戒を解いたように自然に笑った。

「ああ、そうですよね……。貴族の方がこんな明らかな庶民に親しげになさらないものね」

　そういうものなんだろうか。生まれ変わる前の日本ではとうにそんな身分制度なんて崩壊していたから感覚が分からない。

　見通しの良い丘で、レーナさんはときどきあたりを気にしながら身を小さくする。

「あの、ルアンナさん。いじめられていたって……？」

　彼女はやっぱりそこに食いついてきた。

「いえ、前は貧乏だったの。それで服を汚してたびたび草を採ったり、魚を捕ったりしてたものだから」

「あら、それは確かに、いじめる子はいるかも……」

　そういうものらしい。まあ、そうなんだろう。私の世界でも女が土遊びだなんて言われていたんだ。この世界の様子だとそれに輪をかけて指弾されてもおかしくはない。まして、こんな裾の長いドレスで着飾る世なんだ。

「レーナさんも……そうなのね？」

　同情するように優しい表情をしていた彼女の顔はたちまち曇って下を向いた。よければ聞かせて、そう伝えた私に、ぜひ聞いて、彼女は食いすがるような顔で言った。