いじめられっ子だった私は悪役令嬢となってさえ、貫き通さねばならないのです!

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 おかしかった。私はルアンナでなにかにあって伏せっていたらしく、以前の記憶は曖昧だ。でも、曖昧にしろいじめられていた覚えはあるし、私はそうして川に落とされたはずだった。そのとき着ていたのは中学指定のセーラー服で、いまクローゼットに収まっているようなドレスじゃない。どちらかというと記憶が連続して見えるのは前世のほうで、ルアンナとしての記憶はまるでない。  私の部屋らしい広間にはベランダがついていて暗い夜に月が明かりを灯していた。中学の歴史の授業で歌を詠んで故国を想った人の話を聞いたことがあったな。私は開き戸を押して外に出た。二階なのにずいぶん高い。街灯りも少なく月が近かった。私が歴史に思いを馳せるなんて。お父さんもお母さんも悲しんだかな……やさしかったものね。低賃金でこころを圧され、家族を抱き込んで笑って。私がもっと笑いかけてあげるべきだった。無理なんてしないでも、自然に微笑めるように。
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