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「ルアンナ、記憶を失ってつらいだろう。もしかしたら私を父と思えないかも知れない……。でも、お父さんはルアンナのこと想ってるから。力になれることは言っておくれ?」
私はお父さんらしき人をまじまじ見た。私をお姫さま抱っこしたこの人が父なのだ。美女として生まれ変わったことは残酷なかつての人生に対する神さまからの憐みなんだろうと思ったけれど、私は自分の父親がまたこころやさしい人間であることのほうが嬉しかった。
あたりを見回して、やっぱり母親らしき人はいなかった。目覚めたときも姿はなく、不幸があったのか、あるいは不仲なのか。ためらった末、訊ねた。
「お父さま、お母さまは……」
少し驚いたように息を呑んで、お父さまは悲しそうに笑った。
「うん、眠っているよ。ルアンナが無事に帰ってきたんだ。こんど一緒にお墓に行こう」
お父さまは私の頭にやさしく手を置いた。やっぱり母は死んでいるようだった。
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