いじめられっ子だった私は悪役令嬢となってさえ、貫き通さねばならないのです!

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 客足はだんだん遠のいていった。やって来る厚顔な人間はいたけれど、私は自分の行為が目に見える結果となっていることに満足だった。だからやさしい公爵に見合わぬ悪女という自分に対する評が領内に流れ出しても大して気にはならなかった。  そうして生活する中で、お父さまは私の噂を聞いただろうか。家に籠もってばかりの私を外に出して、領内に私の姿を見せたいようだった。自分で言うのもなんだけれど、確かに私と普通に接して悪者などと思う人は少ないに違いない。けれど、私は……。 「ルアンナ、外に出たくはないのかい?」  しばらくして食事の時にお父さまがそう切り出した。「いえ、いまは」、そう答えた私にお父さまは重苦しい表情をした。 「ベルさん、お父さまは私が外に出ないことを気にしてらっしゃるかしら? 外は……ちょっと、怖いのだけれど」  私付きメイドのベルさんはベッドメイクする手を止めて、私の前にかがんだ。ベルさんは慎重な女性で、恐らくなのですが、と前置きした上で話してくれた。 「以前はお外によく出たがっていらっしゃいましたから、……事件がお嬢さまのこころにもひどく傷をつけてしまったのだと、そう思っていらっしゃるんじゃないでしょうか」  以前のルアンナがそういう女の子だとは初耳だった。確かに、それは心配を深くするかも知れない。怖いは怖いけれど……お父さまの心配ごとを増やしたくはなかった。 「……お父さまはお忙しいかしら」 「どういうことでしょう。ご用があるなら相談して参りましょうか?」 「いいえ、外へ出たほうがお父さまは安心するでしょう? でもまだ怖いの。私とお父さまと両方が安心できる方法として、一緒だったらなあ、って」  ベルさんは柔らかに微笑んだ。 「そういうことでしたら、旦那さまも喜んで受け容れてくださるでしょう。お忙しければ、信頼できる人間をお付けくださるはずですわ」
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