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「直っちゃま、もっとツッコミの勢いがあってもいいんじゃないの?」
「そうかなあ。自分では力を入れているつもりなんだけど」
「なんなら、頭ハタいてくれても構わないよ」
「うーん。あんまり痛そうなツッコミって好きじゃなくて」僕は言う。
「でもなんかボケとツッコミがゆるいんじゃないかなあ、と思って」京平は言う。
「そうかー。じゃあ今度はツッコミ、キツめでやってみようか」
気がつけばお題の3つをこなして2時間。練習はあっという間に過ぎていく。
「あー疲れた。今日も課題はたくさん見つかったな」京平はコントが終わると、地面のコンクリートに仰向けになって倒れた。
「あー、俺たちって、売れるんだろうか? もう4年目だよ」京平は大の字になる。
「去年の桜コントグランプリも準々決勝までいったじゃないか。あとちょっとの努力だと思うよ」
「こんな長くて暗いトンネルはいつまで続くのかな」
「トンネルには必ず出口がある。暗闇に見える光に向かって進んでいくしかないだろ。京平、俺のこと信じてよ、きっとみんなを笑わせる台本を書くからさ」
「ああ、暗闇の光ってあれか?」京平は指をさす。
「あれは、公衆トイレの光じゃないか」
「うはは。トイレでさえも眩しいよ」
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