菜々ちゃん

2/3

64人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
それからというもの、ポニーテールの美少女は雨じゃない日以外は毎晩のように僕たちの練習を見に来た。 「どうだった?」また京平が声を掛ける。 「ふつー」 「どうだった?」 「ビミョー」 この繰り返し。コントの最中は笑ってくれてるのに・・・。 京平は1週間ほど経って、痺れを切らした。 「あのさー、俺たちをからかっている? 僕、ノーヴェンバーの京平。相方は直人。きみの名前は?」 「・・・菜々。」 「菜々ちゃんかー。高校生? 大学生?」 「菜々って呼んで。そこの弥々木アニメアカデミーの生徒だよ」 「へーそうなんだ。アニメの学校かー。だから帰り道、寄ってくれるんだね」 「帰り道じゃないよ」 「へ? 違うの?」 「うん。ノーヴェンバーの2人を見に来るとなんか元気が湧くの」 「元気が?」 「そう。こんな暗い公園でも夢に向かって一生懸命な2人を見ていると、アタシも頑張んなきゃって」 「嬉しいなあ」 「アタシ、夢を捨てきれなかったの」 「夢?」 「そう。高卒で就職したんだけど、どうしても漫画家になる夢が捨てきれなくて」 「菜々も夢に向かって頑張っているんだね」(おい、京平、もう呼び捨てかいっ) 「うん。人生は1度きりだから。自分の力を試したいの」 「うん。お互い頑張ろう。ビッグになって夢を叶えるんだ」 「アタシはノーヴェンバーのファン1号でいいかしら?」 「もちろんだよ、でもいつも感想は塩対応だねー」 「ウフ。だって『最高に面白い』なんて言ったら2人は練習しなくなっちゃうじゃない」 「そ、それは・・・」 「菜々さん、そのとおりだよ、京平はすぐ天狗になるから」僕は言った。 「へいへい。謙虚に練習しまーす」 「直人くんに、京平くんね、応援してるから!」そう言って菜々ちゃんは去っていった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加