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こうして菜々ちゃんは、ほぼ毎日、僕らを見にやってくる。ときには、パンやスイーツ、飲み物まで差し入れもしてくれる。
「菜々ちゃん、どうしてこんなに優しくしてくれるの」僕は尋ねた。
「同志だからよ。お互い助け合わなきゃ」
「僕らは菜々ちゃんに何もしてあげてないよ」
「笑わせてくれてるじゃない。それで十分」
「売れない芸人だぜ」
「じゃあ売れるように私、応援するから」
数日後、菜々ちゃんは学校の女友達も連れてくるようになった。
女の子たちも笑ってくれた。
そして女の子たちはまた友達を誘ってくれた。
僕と京平のモチベーションも上がり、菜々ちゃんたちに気に入ってもらえるよう、僕らはより一層、練習に励んだ。
僕はみんなに飽きられないようたくさん台本を書いて、京平に覚えさせた。
「直っちゃま、なんか俺ら、追い風が吹いてる?」
「うん。菜々ちゃん様様だな」僕は微笑む。
「俺、菜々のこと、好きかも」
「うはっ。京平は相変わらず惚れやすいなあ、じゃあなおさら練習しなきゃ」
「うん」
口コミは広まって、事務所の経営する小さな劇場にはお客さんが増えていった。
SNSでは、ブレークするネクスト芸人として若い子の間で僕らは人気になっていったんだ。
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