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14才の春…
学校から帰ると家の中は静まり帰っていた。
何時ものお婆ちゃんの「おかえり」が聞こえなかった。
縁側に座り外を見ている背中は微かに震えていた。
「明莉ごめんな…」
振り向いたお婆ちゃんの顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
「どうした?」
お婆ちゃんのの背中に手を当て顔を覗きこんだ。夕陽に照らされた顔はシワの深さを際立たせ涙が沿うように流れ…今でも忘れない初めて見たお婆ちゃんの泣き顔。その時私はもう直感した事を覚えている。
「婆ちゃんがちゃんとお母さんを育てなかったから明莉に悲しい思いをさせてしまった…。」
しゃくりあげながら必死に私を見て話すお婆ちゃんに聞いた
「悲しい思い?」
「お母さん、出て行った…あの男と暮らすちゅうて…」
「そう…」
私はそれだけ返しお婆ちゃんの背中を指すっていた。
夕陽が照らす庭の木々はまるでこれから寒さに向かう秋の色の様に見えていた…。あの寂しげに映った光景を今でも忘れずにいる。
私が幼稚園の時に父は事故で他界した。私の面倒はお婆ちゃんが見てくれ、母は家計を支える為に働きに出た。
それから10年。母に彼氏が出来た。
その頃から母は私と目を合わせなかったから、来る時が来たと私は思ったより落ち着いていた。
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