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私はミイナ
満月の夜がキライだ。
それも、雨降る満月の夜。
あのおぞましい悪夢を思い出すからだ。
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私は深い海底から目覚める様に瞼を開ける。
自分の爪を見て怖気が立つ。
また、だ。
爪と肉の間には、赤褐色の液体が挟まっている。私は急いで洗面所へと向かい、ゴシゴシ手を洗う。気が狂った様に洗う。爪の間はブラシを使う。
慣れない。
昨夜の記憶を辿っても思い出せない。
でも、感触というものが覚えている。
震える掌を必死で握りしめる。身体中がガタガタ震え出す。
いつまで続くの?
満月の雨の夜に、私はあいつに体と意識を奪われる。
私は望月ミイナ。
あいつは望月ミーナ。
あの日から這い出てくるもう一人のワタシ。
殺人を犯す狂った人格。
男の悲鳴と、暁の血、人を刺す感覚だけは何故か残っている。
ミーナがどこで獲物を捕らえ、どうして殺しているのかは分からない。どう処理をしているのかも。ミーナになっている時の私は、奥深くに追いやられ静かな森の中で眠っているみたいになる。
いつまで続くのだろう。
だから、私は満月の雨の日には外出しない。あのまん丸の月と雨雫を浴びるとあいつが出てくるから。気をつけているはずなのに、あいつは奥底から這い出てくるんだ。
怖い。
誰にも相談できずにいる。
殺人をしてるなんて言えない。
ましてや、恋人の圭にも。
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