私はミイナ

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

私はミイナ

満月の夜がキライだ。   それも、雨降る満月の夜。 あのおぞましい悪夢を思い出すからだ。 ///// 私は深い海底から目覚める様に瞼を開ける。 自分の爪を見て怖気が立つ。 また、だ。 爪と肉の間には、赤褐色の液体が挟まっている。私は急いで洗面所へと向かい、ゴシゴシ手を洗う。気が狂った様に洗う。爪の間はブラシを使う。 慣れない。 昨夜の記憶を辿っても思い出せない。 でも、感触というものが覚えている。 震える掌を必死で握りしめる。身体中がガタガタ震え出す。 いつまで続くの? 満月の雨の夜に、私はあいつに体と意識を奪われる。 私は望月ミイナ。 あいつは望月ミーナ。 あの日から這い出てくるもう一人のワタシ。 殺人を犯す狂った人格。 男の悲鳴と、暁の血、人を刺す感覚だけは何故か残っている。 ミーナがどこで獲物を捕らえ、どうして殺しているのかは分からない。どう処理をしているのかも。ミーナになっている時の私は、奥深くに追いやられ静かな森の中で眠っているみたいになる。 いつまで続くのだろう。 だから、私は満月の雨の日には外出しない。あのまん丸の月と雨雫を浴びるとあいつが出てくるから。気をつけているはずなのに、あいつは奥底から這い出てくるんだ。 怖い。 誰にも相談できずにいる。 殺人をしてるなんて言えない。 ましてや、恋人の圭にも。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!