月には花を

月子

　陽太と依里の姉弟は、千里眼の巫女を輩出する我が遠野家に代々仕える星野家の子どもたちだ。
　依里はわたしの身の回りの世話をし、陽太は学校に通いながらいずれ泰司のあとを継ぐための修練に励んでいる。
　泰司はわたしの目を守る術師の名だ。
故に、陽太は一生わたしの傍にいる。もっと幼いころは陽太の後ろをいつでもついて回っていた。
　覆いをしていても陽太のそばにいれば、陽太の目を通して周りの様子が見えた。それがうれしかった。陽太が近くにいればわたしにはすぐ分かった。陽太は光だ。
　陽太が校舎の中へと消えていくと、わたしの目も光を失った。
　しばらく立ち尽くしていると、運転手が迎えにきた。わたしひとりを乗せ、車は暗闇の中を家路についた。