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エヴァレットは先端が匙のような形をした竿を手に取ると、坩堝の中に溶かしてある材料のガラスをすくい取った。それを足元に置いてある木桶の上で素早く傾けると、融解したガラスは糖蜜のようにとろりとした雫となって、桶に張った水の中に落ちる。じゅっ、という音とともに湯気が立つ。
すかさず、寸分も狂いのない手つきで匙を引き、水中に垂れた雫の先をまっすぐに伸ばしていく。最後にくるりと手首を返して端に輪を作り、成型に使う頑丈な鋏で端を切り落とした。
ガラスの雫は水の中で急速に固まる。それを火箸で掴み出し、布で水分を拭き取る。
そうやって細長いガラス玉をいくつも仕上げると、エヴァレットは窯の前を離れ、ざっと汗を拭いて薄い麻のシャツを無造作に羽織った。
だが、できたばかりのガラスの雫を片付けようと工房裏に向かったところで、いつもとは違う様子の外の騒ぎが耳に入ってきた。
「なんだなんだ?」
「見慣れない奴がそっちに走ってったぞ」
「こそ泥か?」
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