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エヴァレットの背中から、力強い腕がほどける。自由になった身体を半歩引いて目の前の男の顔を見上げたエヴァレットは、思わず息を呑んだ。
――こんな色が、この世界にはあるんだ。
澄んだ藍色の瞳が、こちらをじっと見つめている。蒼玉を連想させる色合いだが、天然石のような冷たさは感じられない。
まるで、内側に炎を閉じ込めたランプのようだ。ただ、こんな美しい色のガラスの火屋を作る職人が、果たしてこの地上にいるだろうか。
「怪我はないか」
吸い込まれるようにその瞳に見入っていたエヴァレットは、彼のその一言ではっと我に返った。
言葉の発音の仕方から、外国人だと知れる。身なりも、この島ではあまり見かけない雰囲気だ。
襟元の詰まった紺鼠色の上着の着こなしが、いかにも異国風で垢抜けている。手足を持て余しそうな長身は、エヴァレットの背丈よりたっぷり掌二つ分は高いだろう。かといって筋骨隆々といった感じではなく、肩幅こそ広いが全体的に細身の体型だ。
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