8人が本棚に入れています
本棚に追加
10
*
「いらっしゃいませ!片山さん。お待ちしておりました。」
3ヶ月後 僕はアパートを引き払った。僕は今、自動車中古車センターで整備士をやっている。少しずつだが過去の記憶が甦りつつある。
*
「お父さん 後ろ大丈夫?」美崎のネックレスには、母の指輪が光っていた。
「しっかり掴まってろ」
「お父さん ゆっくりね」
バイクはゆっくりと動き出した。風を切る。“あ…ぁ なんて気持ちいいんだ”
━明恵の息づかいが聞こえる━
「 日光 サイコー!トシ…も!」
「聞こえないぞー!」
「トシ…紅葉サイコー!」
「なんだそれ!ははは」
明恵の声が聞こえた。甘酸っぱい思い出に胸が痛くなった。
「お父さ… サイコー!」
「…」
「お父さん… サイコーだね!」
美崎だ!
あぁ… 俺の大事な娘だ。
「チキショー !」
“ 何が 何でも 美崎と生き抜いてやる。見ててくれ明恵”
父と娘は、今、ゆっくり、ゆっくり、自分達の道を探るかのように、虹色の森のトンネルの中に消えて行った。
【完】
最初のコメントを投稿しよう!