1人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
第1話「報告」
本間光留が通う中学校は、愛知県の人口10万人ほどの地方都市にある通常の公立学校だ。毎朝7時過ぎから部活の朝練があり、6時間の授業が終われば、また部活。そんな、ごくありふれた学校には、特別盛り上がるような行事はないけれど、平穏な日常が流れていた。
光留はバスケットボール部に入り、小学校から教室で習っていた事と持ち前の運動神経を活かし、1年生ながらレギュラーとして活躍していた。あと1ヶ月で2年生になるが、どんなスーパールーキーが来てもレギュラーは譲らない気でいる。
その日も、約1時間の朝練で汗を流した光留は、部室で着替えを済ませて教室へ向かった。教室の後ろの引き戸を開けると、既に数人の男子のクラスメートがいて、窓際で話していた。
「あ、本間。おはよう」
1人が光留に気がついて言う。光留は「おはよう」と返し、そのグループから1メートルほど離れた場所の自席に座った。少し耳をすませば、その内容を聞き取ることが出来る。
「最近、小村センセーのお腹大きくなってきてない?」
小村というのは光留のクラスの担任で、理科担当の女教師だ。
「妊娠したって噂聞いたよ」
「えマジで?それって、ヤったってこと?」
「そりゃそうだろ」
「えー、あいつが?」
「うわっ、キモッ」
「なんかイラつくな。ちょっとイタズラしてやろうぜ」
「ああ、いいねぇ」
そう、小村は嫌われ者なのだ。妊娠を知った彼らは、それが気に入らない様子。
カバンから教科書やノートを取り出し、授業の準備をする光留は聞こえないふりをするが、彼らの会話にとてつもない悪寒を覚えた。
最初のコメントを投稿しよう!