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今度の人生は、王女様
はい!やってきました、五度目の転生!
ちょっとテンションがおかしくなっているけれど、そのうち戻るわ!!!!
あぁ、私ったら何度失敗するの?
そして沈黙の魔女と呼ばれた女は、またもや最初の人生と同じ世界に転生してきたようです。
「えー、まじか~」
私が魔女だった頃に住んでいた沈黙の森のある、メイドインヘル帝国だわここ。間違いない。
ただし時代は500年後。
世界地図はちょっとというかけっこう変わっていて、小国がいっぱいあったのが大国に取り込まれているわね。
ちっ、私を騙した王子の国、まだある。
フレーザー王国。
地図を見ているだけでイラついてきた。
いっそ今世で滅ぼしたろか、コノヤロウ。
あぁ、でもそれはさすがにダメ。
私はよき魔女になり、心を入れ替えて今世をまっとうするの。
さすがに何度も転生すればわかった。為政者がいくら悪に手を染めようと、善良な国民を犠牲にするのはよくないと。いくら惚れた男が悪人でも、街には優しい人がいて、友達もできて、平凡な日々はとてもありがたいものだって。
だから、滅するのは敵だけでいい。
うふふ、そこはねぇ?だって、ねぇ?やられたらやり返さないと……ねぇ?
善良な魔女には程遠いかもしれないけれど、今世こそ愛し愛され幸せになりたい!
だいたい、そろそろ精神的にもたない。
もう限界。
転生し続けるのがこんなにしんどいと思わなかったわ。
魔法の研究もして、今世で転生を終えるようにしようかな。きっとそれがいい。
もしも今世がダメでも、もう次のターンに挑む気力はない。
これまで私がやらかしたことは清算して、おとなしく天に召されよう。
そう決めて、私はラストの人生を踏み出した。
メイドインヘル帝国の第一王女・ユウナリュウムとしての生涯を――
ユウナリュウムとしての人生は、素晴らしい滑り出しだった。
白く透き通るような肌に大きな亜麻色の瞳、絹糸のように輝く黄金色の髪。スッと通った鼻筋は、この国では絶世の美女の条件。さくらんぼ色の唇は、柔らかな弧を描くと男たちを魅了する。
まさに、結婚したいナンバーワン美女である理想的な王女様!
見事なまでのナイスバディも、いやぁ、本当に親の遺伝子様様だわ。
幼少期からたくさんの男の子たちに傅かれ、たまにやってくるロリコンは返り討ちにして、ゆくゆくはこの国を率いる女王陛下に……そんな順風満帆な人生。
きっとよき伴侶に巡り合えるに違いない。周囲の大人たちはそう言ってくれた。
でも
残念ながら、人生はそう甘くない。
十八歳になった私には、未だ婚約者がいなかった。
理由はひとつ。
強すぎるから!!!!!!
魔女のときは魔法しか使えなかったから、「剣とかやってみたいな~」って思ってちょっとがんばりすぎちゃったんだよね!
その結果、十歳で正騎士レベルの剣術を身に着け、十五歳で騎士団副官になり、並みの男は私に勝てなくなってしまった。
気づけ、気づけ私。こうなる前に、もっと初期段階でなんで気づかなかったの!?
もともと凝り性なのがよくなかった。
魔女のときも必要以上に魔法道具や魔術を極め、周囲に警戒されてしまった。それを五度目の転生でまだ反省していなかった!
しかも問題はまだある。
私が魔女だった頃に仕掛けた罠が、この世界にはあまた張り巡らされていて、派兵するたびにたくさんのケガ人を出していたの。
各国がこぞって欲しがりそうな鉱山や金山、アイテムいっぱいのダンジョンには、「王子やその子孫が絶対に手に入れられないように」って呪いや結界や魔法陣やらを作りまくったのよね……!
500年のときを経て、まだそれらのほとんどが踏破されていないなんて、皆どれだけ才能ないの?!一人の魔女にどれだけ世界を乱されてるのよ!!
しっかりしなさいよ、今世の者たち!!
さぞかし魔女ティエナは嫌われ者なんだろう、そう思っていたら、王子の方に恨みつらみが向けられていた。それはまぁ、いい気味だったわ。おっと、もう過去は忘れなければ。
そんなこんなで、将来有望な男性陣が派兵で使い物にならなくなっちゃうもんだから、婚約者を決めるのも一苦労で。私が騎士団の副官を務める部隊は、毎回私のおかげでけが人ゼロなんだけれど……
はぁ、こんなことで運命の人が見つかるのかしら。
一八歳の乙女心は、自らの犯した前世の罪によりぐらっぐらに揺れていた。
「何とかしなきゃいけないわよね~」
後始末をつけなきゃ。
魔法剣士として他の追随を許さない王女になったんだから、過去の憂いをすっきりさせて新しい恋をしましょうか。
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