愛されるまで転生し続ける魔女

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愛されるまで転生し続ける魔女

むかしむかし、あるところに醜い魔女が住んでいました。 彼女は、沈黙の魔女・ティエナ。 真っ白な髪に落ちくぼんだ目。まだ二十代だというのに、しゃがれた声は老婆のよう。 森の中でひっそりと暮らす魔女でしたが、魔術の腕は世界一。 その存在は、魔術師たちから崇められるほど至高の魔女でした。 そんな彼女のもとに、ある日、偶然にも王子様がやってきました。 敵に追われ、瀕死だった彼を魔女は必死で介抱して助けてあげます。 「ありがとう。君に、また会いたい」 「はい」 二人は身分を越えて、何度も逢瀬を重ねました。 「愛しているよ。誰が何と言おうと、私にとって君は美しく見える。愛おしい人だ」 「うれしい……!」 けれどそれは、まやかしだったのです。 王子様には婚約者がいて、しかも相思相愛。彼は魔女の作る魔法道具や薬だけが目的で、容姿の醜い女など近づくのも気持ち悪いと周囲には話していました。 偶然にも、その話を聞いてしまった魔女は怒り狂います。 「愛していたのに……!信じていたのに……!」 心が怒りに染まった魔女は、王子様とその婚約者をカエルに変えてしまいます。 人々は王子のやったことに「自業自得だ」と思いつつも、魔女の恐ろしさに震えあがりました。 「もう恋なんて……って言いたいところだけれど、やっぱり恋がしたい!たった一人に愛し愛され、幸せな結婚をしてみたい!!」 魔女は自らの命を絶ち、そしてその魂に転生の魔術を仕込みます。 「本当に私を愛してくれる人に出会えるまで、転生し続ける魔術。どうか運命の人に出会わせて……!」 こうして魔女は、永い旅に出ることになりました。
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