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私は今、レストランの個室にいる。女性と待ち合わせをしているのだ。デートいうことになるが、今日はじめて実際に会う。あるアプリでマッチングし、メッセージで意気投合して今日に至るというところだ。
「お待たせしました」待ち合わせの女性が入ってくる。茶色い長袖ワンピースに白いカーディガンを羽織っている。私はワンピースの丈に注目する。膝丈ほどか、これならちょうどいい。私はスカートの丈の長さで女を品定めする。長すぎても短すぎてもダメなのだ。
間接照明でデザインされた店内の雰囲気と、美味しい料理とお酒も相まって、私たちの関係はどんどん親密なものに、そしてよりオープンなものになっていく。
「私はプロレスを観るのが好きなの」と女性は語り出す。プロレスのどこが面白いんだい?と尋ねると、「プロレスラーはね、対戦相手の攻撃をすべて受け切るのよ。攻撃を避けたり、攻撃をさせないように戦ったりはしない。弱点を狙ったりもしない。相手の最高のパフォーマンスを全身に浴びて、それで相手を捩じ伏せるの。これこそが正々堂々というものなの。その戦いに心のトキメキが止まらないの」と饒舌に情熱的に語ってくれた。
それを聞いて、私は心に決める。この女は間違いない。今夜仕留めるしかない。
一通り食べ終わったところで、私は散歩でもしないかと女を誘う。夜の街は涼しい風が吹き、街灯が私たちの道を照らしてくれる。自然と手を繋ぐ。私が左手で女が右手。これは私の決まり事だ。
私は公園を通って、人がほとんど通らない路地の方に入っていく。人が誰もいない路地の角で、足を止めて女と向き合う。女と目が合うと、女の瞳が潤んでいるのがわかる。このタイミングだと察知し、私は女と唇を重ねる。初めはすぐに唇を離し、すぐに二度目のキスに入る。二度目は激しいキスになる。女が舌を絡めてきたその時、私は女のワンピースの下から手を入れる。
ここからはスピードの勝負だ。ストッキングのザラザラした感触が手に当たると、それを指で摘んで空間をつくり、その空間に手を押し入れる。その先にはサラサラしたショーツに手が届く。
ここはゴールではない。繊細なショーツを強引に引っ張ると、そこにはビチャビチャの沼が待っている。その沼こそがゴールなのだ。私は沼に中指を入れて、中をかき混ぜる。「あ、あ、あ…」女は目を見開いて口を開いて身を強張らせて小さな声で喘いでいる。
中指が沼の中のある物に触れる。もう一本人差し指を沼の中に入れて、二本指でその物を掴もうとする。そのために更に二本指で沼の中をかき混ぜることになる。「あう、あう〜はぁ!」女はつま先立ちになり、手は私の腕を強く掴んでいる。
やっと沼の中の物を掴み、外に引っ張り出す。その瞬間、女は小さく叫び、身体全体をビクビクさせた。出てきたのは赤くて長い毛糸だった。
「この毛糸は、君が宇宙人に身体をコントロールされていた証拠だ。この毛糸を取り出したから、もう君はコントロールされることはない。君の身体は君のものだ」
どうして、宇宙人にコントロールされてると分かったんですか?と女は尋ねてくる。
「前から君をマークしてたが、宇宙人にコントロールされると、プロレスが好きになる傾向にある。それで確信した」と私は言った。
君は今でもプロレスは好きかい?と尋ねると、プロレスなんて観たこともないわとワンピースの裾を直しながら言った。赤い毛糸が風に舞っていた。
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