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犯罪者更生施設
なんだここは?
俺の目の前にはローマの歴史的な建造物を彷彿とさせる白亜の塔が建っていた。
中央部の入口の少し上には大きく光の園と楷書体で象られた立体的な表札が見て取れた。
同行している刑事は何故か苦々しい顔でそれを見上げている。
程なくして中から30歳前後の目鼻立ちのはっきりした女が白装束に赤いラインの入ったものを着てにこやかに出てきた。
「ようこそ」
そう言って女は胸の前で手を合わせた。
そうする事によってかなり胸が強調されて俺でさえソワソワした。
よく見ると白装束はシルクの様な素材でできているらしく上品さの中にも妖艶な雰囲気を醸し出していた。
「あなたが橋下様ですね」
久しぶりに敬称で呼ばれたものだから最初は自分の事だと分からなかった。
しかしじっとこちらを見続ける女性の眼差しに気圧され徐々に事態を理解した俺は
「……はい」
と消え入りそうな声で答えて頷くのが精一杯だった。
その様子を怒るでもなく見守っていた彼女はクルリと背を向けると
「では付いて来てください」
とだけ言って歩き始めた。
驚いた事に同行してきた刑事はお役御免とばかりに踵を返して帰って行った。
俺はこの無防備は女と図らずも二人きりというシチュエーションになったわけだ。
良いのか?
頭の中でそんな言葉がよぎった。
たしかに俺は大人の女性には興味がないと思われてるかも知れない、しかし……
仮にも犯罪者だぞ?
良いのか?
俺は驚きながらも、自分の選択が正しかった事を確信した。
実刑で五年の判決を受けた俺は何やら秘密の部屋に通され選択を迫られた。
このまま実刑を受けるか、それとも一年間とある宗教法人に入り更生をめざすか?
もちろん、俺は二つ返事で答えた。
どんな宗教だろうと一年我慢すれば良いんなら選ばない手はない。
あとは更生した様なフリさえしとけば出られるんだろう?
それにこの感じだと……
楽しい修行になりそうだ。
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