狐火の夜

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「黒いのの好きにされているのは、いささか不満だが……まあよい。おぬしは巴がこの家に来た日から、ずっと焦がれておったからのう。大目に見てやるか」 「黙れ。余計なことを言うな」 「なに、事実であろう。まあ、かくいう我も、いつの間にやら巴を欲していた身じゃ。仲良く分け合おうぞ」  くすくすと笑う白磁様とは対照的に、黒曜様は面白くなさそうに口を噤んだ。  しかし、すぐに思い出したように私を見下ろすと、再び指を膣内に挿入する。先ほどよりも奥深く、体内の襞を一つ一つ確認していくかのようなその動きに、私はあっという間に音を上げた。 「あっ、だ、だめ、そんなに擦っては……っ、あああっ!」 「ここか、巴の好いところは」 「んうぅっ、だめ、だめです黒曜様っ! か、からだが、おかしくなりそう」 「何も考えなくて良い。絶頂するのは初めてか? ならば、そこの白いのの髪でも引っ張って耐えていろ」  私の目の前にある白磁様の頭を指差して、黒曜様はぞんざいに言い放った。「好きにしてよいぞ」と、私の胸の先端を舐めながら白磁様がにやりと笑う。  感じたことのない快楽に呑まれそうになっていた私は、縋るように白磁様の方に手を伸ばす。そして錦糸の髪をくしゃりと掻き乱しながら、今にもやってきそうな大きな快感の波を待ち侘びた。 「何も我慢しなくていい。果てろ、巴」 「こ、黒曜、さまぁっ……! ひあっ、あっ、ああ──ッ!!」  頭の中で火花が散ったかと思うほど、初めての絶頂は激しいものだった。  全身がびくびくと痙攣して、気付けば白磁様の美しい髪を派手に乱れさせてしまっていた。息も絶え絶えに「申し訳ありません」と詫びると、白磁様は緩く首を振る。 「いやあ、愛しい女の喘ぐ姿を間近で見られるとは僥倖よ。ただ、できることなら我の手で乱れてほしかったがのう」 「はっ、白磁、さま……」 「平気か? 巴。痛むところはないか」 「黒曜、様……はい、どこも、痛くありません」  呼吸を整えながら返事をすると、黒曜様はほっと安堵したような表情をなさった。  こんなにも気遣われながら抱かれることなんて、旦那様との閨ではただの一度だって無かった。初夜からして旦那様は身勝手に一物を私の中で擦って出すだけだったから、それが普通とさえ思っていた。  大量にあふれた蜜を膨れあがった花芽に擦り付けながら、白磁様が私の唇に口づけを落とす。蕩けてしまいそうなほど優しいそれに夢中で応えていると、緩んだ蜜口に硬く熱い何かが触れた。 「あっ……」 「挿れるぞ。こっちを向いてくれ」 「は……はい、黒曜様」  秘裂に触れたものの大きさに思わず腰が引ける。しかし、今にも喰らいついてきそうなほど熱い黒曜様の視線に促され、私はおずおずと体を彼の方へ向けた。黒曜様はぐっと強い力で私の右脚を抱えると、硬くそそり立つ御自身の先端をゆっくりと押し付ける。 「なんだ、もう挿れるのか。せっかちなことじゃ」 「うるさい。黙っていろ」 「やれやれ、必死じゃのう。そのように焦らずとも、巴はすでに我らのものだというに。なあ、巴」  白磁様のお言葉に、私はこくりと頷く。  そして、正面に立ち私の表情を窺う黒曜様の腕にそっと触れながら、紺碧の瞳をまっすぐに見据えて懇願した。 「どうか、この巴の身も心も、お二人のものにしてください」  旦那様の存在など、頭の隅に追いやられていた。  狐森家の嫁としてではなく、今はただ一人の女として、この二匹のお狐様に愛されたい一心で体を擦り寄せる。  その言葉を受け、黒曜様が今一度私の右脚を割り開いて抱え上げた。背後では白磁様が、外耳を舌先でなぞりながら私の体をしかと支えてくださっている。  そしてついに、濡れそぼつ膣内が黒曜様の熱い滾りで埋め尽くされる。その感覚に打ち震えながら、あまりの幸福感に私は歓喜の涙を流した。
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