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乾いてひび割れた唇に、柔らかく潤った黒曜様の唇が重なる。浅黒い肌に漆黒の髪を持つ彼は、薄く目を開けて静かに私の表情を伺っていた。
長く濃厚な口づけの最中、空気を取り込もうと口を開けばぬるりと厚い舌が滑り込んできて、その動きに私は翻弄されるばかりだ。
「こら、巴。黒いのばかり構うな、寂しいだろう」
「も、申し訳ありません、白磁さま……んっ、んんぅっ! だっ、だめです、そこはっ……!」
黒曜様の舌に気を取られていると、気に食わぬとでも言いたげに白磁様の指先が秘裂をなぞる。青白い肌に錦糸のような髪を長く垂らした彼は、私の制止など意にも介さず割れ目に指を這わせ続けている。ぬめりを帯びたその感触に驚く間もなく、敏感な突起を探り当てられ、意図せず腰が跳ねた。
──我らの、花嫁御になってくれ。
その願いに、私は頷くことも、首を横に振ることもしなかった。
しかし、私の胸の内などお二人にはとうに見透かされていたのだろう。
最初に私に触れたのは、意外にも黒曜様であった。彼は壊れ物を扱うかのような繊細な手つきで赤黒く腫れあがった私の頬に触れ、「よく耐えたな」と労るような言葉をかけてくださる。
そのお言葉だけでも今の私には十分だったのだが、不思議なことに黒曜様の指先が触れると、その箇所の痛みが綺麗さっぱり消え去るのだ。驚いて夜空のような紺碧の瞳を見つめると、彼はふっと笑って私の頭を愛おしそうに撫でた。
「おい、黒いの。言った側から巴を独り占めするでない」
「……なんだ。今は傷を癒していたんだ、邪魔をするな」
「邪魔するなだと? それはこっちの台詞じゃ。いいか、巴は我らの花嫁御であって、おぬし一匹のものではない。努々忘れるなよ」
棘のある言い方に黒曜様は一瞬むっとした顔を見せたものの、すぐに諦めたように行為の続きに戻る。
一方、白磁様は勝ち誇ったような顔で再び私の秘所を弄り、「よく濡れておるのう」と嬉しそうにおっしゃった。
「どう、して……旦那様との時は、その、濡らしたくとも、濡れてくれないのです」
「はは、それはおぬしがあの男に心を許していない証であろう。……ああ、見てみろ、巴。先刻あの男に吐き出された子種が出てきおったぞ」
言われた通りに白磁様の指先に目を移す。彼の華奢な指に粘り気のある白濁がこびりついていて、それが旦那様のものであると思うだけで寒気がした。
「ふむ。しかし、おかしな話じゃのう。妾にやや子ができたなどと言っていたが、この子種では到底孕むまい」
「……え?」
「それは、俺もおかしいと思っていた。あの男には精気が感じられん。だから巴が孕むわけがないと見て安心していたのだが」
混乱する私を後目に、お二人は顔を見合わせた後、何やら納得した様子で小さく笑った。
白磁様は床に散らばっていた布切れでご自身の指先を拭うと、もう一度私の蜜口に触れながら教えてくださる。
「あの男は、いくら女と情を交わそうと子を為すことはできぬ。では、熊谷の妾とやらは一体誰の子を身籠ったのであろうなあ」
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