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恐ろしげな未来
「なぁ優華」
「うん?」
「お前は未完成のマシンを使って二度も俺の前に現れた。三十年前と二十年前だ。これだったらピンポイントで行けたんだけど、そうはいかなかった。だからこそビンタ事件は起こった」
ふっと笑った優華は、あたしがこれを使って? ホントなの、と首を傾げた。
「何のために?」
「あの火事を知らせるためだ」
「ということは?」
「死んだらしい」
「それをあたしが助けに行った」
「そうだ。うっかり忘れててマシンは運び出せなかったが生き延びた」
「現れたのがあたしだって気がついたの」
「気づくわけがない。最初に会ったとき俺は二十歳だったんだから。気がついたのは二十年前、福井のじいちゃんが名づけたお前の名前を聞いたときだ。忠告に現れた女性は優華と名乗り、生まれてくる子は女の子だと予言した。そのときだ、我知らず優華の腕を掴んでしまって移動したことがある」
「この場所に?」
「いや、火事のあとにマシンの中身だけお前の部屋に移されたんだろう。使ったのは時系列で言うなら去年、母さんの誕生日の後だ。あの時のお前はすべてを知っていた。俺が見た恐ろしい未来、このメモも」
取り出したアイフォンのファイルを呼び出した。
【のたうつ蛇のように崩壊している高速道路。脱線した列車。大破したビルの外壁やガラスが落ちる中を逃げ惑う人たち。燃え盛る炎と煙、主要幹線道路は炎上する自動車が使える状態ではない。ここが東京であることを証明しているのは遠くに見えるスカイツリーだけだ】
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