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親殺しのパラドックス
「火事で死ぬ……それを知らせに?」通行人の邪魔になるから喫茶店を指差した。
「いえ、そこまでの時間はありません。湯本さんは未来を見たようです。それをアイフォンに記録しているんです。画像とメモに」
「アイフォン?」
「通信端末、携帯電話です。それが起きる日時が分からないから知りたいんです」
やはり未来から来た人だ。それはとりもなおさず俺が開発に成功するということになる。
「だから、完成させろと」
「わたしはただ湯本さんに生きてほしいだけだったんですけど」
「でも、過去を変えることは……」
「過去に遡って親を殺すのは不可能というパラドックスですか? 過去が変わらない世界と変わった世界が出現すると思いますができるはずです。湯本さん自身も書いています。並行宇宙と」
「デイヴィッド・ドイッチュ」
「いえ、バシャールの話です」
「バシャール?」
「本題ではありませんが……そもそも時間自体が存在していないので、時間旅行も成り立たないとは言ってますけど」
「要するに」ちょっと恥ずかしい装置の名を口にせざるを得なかった。
「タイムマシンを完成させればいいんですね」
「ええ。それと湯本さんの推測通り核が使われたのなら、核ミサイルを発射した国を突き止める必要があります」
「核⁉」
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