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火災
昨夜探し出したメモに目を落とした。
【20×5年五月二十六日 東京都○○区○○2-35-4-203号室 14:36火災発生】
一階に飲食店が多く入った複合ビルを遠くから見つめた。真下にある飲食店からの出火だ。竜のように揺れる炎と窓から噴き出す黒煙が渦を巻き、消防の放水が絶え間なく続いている。
メモを探すのに手間取ってマシンは運び出せなかったが、優華が過去に飛べたということはマシンは無事のはずだ。部屋に運び込み使ったのだろう。
こうして生き延びたということは、優華は過去へは行かない。僕に忠告を与えた優華は、ここには存在しない。並行宇宙が出来上がったのだろうか。
「優華か? いま時間は大丈夫か? お父さんの研究室が燃えてる。うん? 無事だから電話してるんだ。もしもニュースになっても心配しなくていいから。いや、マシンは大丈夫だろう。うん、はい。あ、何時に帰ってくるんだ?」
マシンは解体して研究室の引っ越しをした。忠告さえ忘れていなければこんなことにはならなかったのだが。
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