2人が本棚に入れています
本棚に追加
紫のカーネーション4
「あなたはわたしの分身。わたしの子ども」
「そ、そんなはずはない」
「そんなはず、はあるのよ。あなたはわたしのここから生まれた」
女はそう言ったかと思うと、俺から身体を離しもの凄い勢いで、俺の頭を股の間に突っ込んだ。
俺は開いた女の股の中にぐいぐいと入っていくではないか。みるみるうちに俺は女の内部で一体になってしまった。
「もう、ダメだ…」
「あなたは、わたし。わたしの一部を取り戻したわ。病気で死んだなんてウソだから」
女の呟きが微かに聞こえてきた。
「わたしは、儚い花のようなもの。人であって人ではない。悲しい性ね。わたしはあなたを産むとわたしの一部が壊れた。そう、身体の一部が壊れたの。生きのびるためには、あなたをわたしの中に戻さなければいけない。そんな性と知るまで随分と時間がかかったわ。わたしの身体が変態と知った夫はあなたからわたしを遠ざけようとした。夫の手でどこかにやられる前にわたしは、自ら離れていったわ。わたしの写真をあなたは見たのよね。それが、あなたから姿を消した当時の写真よ。夫は世間体を取り繕うためか、わたしが病気でずっと離れたところで療養している、なんてでっち上げをいていたわね。法うとのことをいうと、わたしは結構あなたのそばにいたわ。
わたしは、長い冬眠のような状態でいたけれどね。土の中、奥深いところで。夫は、つまりあなたの父親はあなたが結婚する頃、亡くなったはず…」
女はそこまで話すと、一息ついたのか、声が聞こえなくなった。それとも、俺が本当におかしくなってしまったのか。
「あなたの心の声はわかるのよ。あなたがおかしくなったのではなく、もう、わたしの一部になりかけているのよ。そう、続きは簡単に言っとくわ。あなたほもうそろそろ、あなた自身でなくなるからね。わたしは、生きたかった。それは本能のようなもの。わたしが蘇るためには、紫のカーネーションとともにあなたを喰らうこと。身体の中に、種を戻すように、あなたの存在をなかったことにする。紫のカーネーションは、あなたと一体になるための導入剤なんだから…」
最初のコメントを投稿しよう!