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波の音が二人の間を流れていく。
それは数秒のことだったのかもしれないけれど
私にはとても長く感じた。
すっと息を吸った譲は…
「俺は瞳が好きだ。」
そうはっきりと告げる。
周りの音に掻き消されることなく、譲の言葉は
しっかりと私の耳に届いた。
その瞬間、ふわっと胸の中いっぱいに
温かいものが広がっていく。
ずっと、ずっと聞きたいと思っていた言葉。
今の気持ちをどんな風に伝えたらいいだろう?
嬉しくて、体が震えるくらいのこの喜びを
どうやって譲に伝えたらいいんだろう?
言葉に詰まった私を譲はぎゅっと抱き締めた。
「…違う。
やっぱり好きなんかじゃ足りない。」
「え…?」
小さく声を漏らした私の耳元で…
「愛してる。」
と譲は言った。
ふいに絡めとられた左手の薬指に嵌められた指輪。
涙でぼやけた視界でもそれはキラキラと輝いて
見えた。
「俺と一緒に生きて下さい。」
「はい。」
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