日常

2/10
72人が本棚に入れています
本棚に追加
/167ページ
彼───宮野譲(みやの ゆずる)は、同棲して 今年で三年になる私、五十嵐瞳(いがらし ひとみ) の恋人だ。 彼との出会いは高校二年生の時。 クラス替えで初めて同じクラスになって、席が 隣同士になった。 その存在は知っていたけど、それまで会話なんて したことがなかった。 何故なら彼は、学校では知らない人が居ないくらい 有名人だったからだ。 ───容姿端麗。 サラサラとした黒髪。 長い睫毛に縁取られた漆黒の瞳。 よく通った鼻筋。 形の良い唇。 隣の席になって、初めてその姿を間近で見た時 なんて美しい人だと思った。 加えて成績優秀。 ここまできたら性格はどうなんだろうかと 思ってしまうが、分け隔てなく誰にでも親切な 優しい性格。 ただ、黙って座っていると… 纏う空気と言うか存在そのものが特別に思えて なかなか話しかけずらいのが正直な感想だった。 だからまさか、そんな彼と親しくなるなんて その時の私には想像もできなかった。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!