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それから私達は、駅前の広場で少しの間
立ち話をした。
それで分かったことは、会いたいと願っていた
彼の家は私の家のすぐ近くだということ。
もしかしたら、今日までに何回かすれ違って
いたのかもしれない。
それでも田舎のあの街と違って、この街は
人で溢れているから、こうしてバッタリ会えた
ことはやっぱり奇跡だ。
『あのさ…もし良かったら晩ご飯一緒に
どうかな?』
その奇跡を無駄にしたくなかった私は、断られる
ことを覚悟して切り出した。
もっと彼と話したい。
もっと彼と一緒に居たい。
少し話しただけで、こんなにも気持ちが溢れて
止まらない。
断られることを想定していた私は、ぐっと
体に力が入る。
彼は一瞬驚いたように目を見開いたあと、視線を
さ迷わせていた。
『駄目かな…?』
やっぱり彼にとったら迷惑かと落胆した時
『駄目じゃない。』
ふっと聞こえてきた言葉。
その時のどこか困ったような、それでいて切なげな
彼の表情を見て…
やっぱり美しい人だと思ったんだ。
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