再会

6/14
前へ
/167ページ
次へ
それから私達は、駅前の広場で少しの間 立ち話をした。 それで分かったことは、会いたいと願っていた 彼の家は私の家のすぐ近くだということ。 もしかしたら、今日までに何回かすれ違って いたのかもしれない。 それでも田舎のあの街と違って、この街は 人で溢れているから、こうしてバッタリ会えた ことはやっぱり奇跡だ。 『あのさ…もし良かったら晩ご飯一緒に どうかな?』 その奇跡を無駄にしたくなかった私は、断られる ことを覚悟して切り出した。 もっと彼と話したい。 もっと彼と一緒に居たい。 少し話しただけで、こんなにも気持ちが溢れて 止まらない。 断られることを想定していた私は、ぐっと 体に力が入る。 彼は一瞬驚いたように目を見開いたあと、視線を さ迷わせていた。 『駄目かな…?』 やっぱり彼にとったら迷惑かと落胆した時 『駄目じゃない。』 ふっと聞こえてきた言葉。 その時のどこか困ったような、それでいて切なげな 彼の表情を見て… やっぱり美しい人だと思ったんだ。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加