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まさかまた彼とこうして話せる日が来る
なんて───。
目の前であの頃と変わらず柔らかな笑顔を浮かべる
彼に、胸が高鳴った。
話題は主に仕事の話など含め"今"のお互いのこと。
普通は高校時代の同級生と再会したら、懐かしい
昔話に花を咲かせるものだと思うけれど
私達にはそれがない。
それは暗黙の了解とでも言うべきか。
高校時代の話になれば…
必然的に思い出してしまうから。
彼女が亡くなった日のことを。
だから私達は食事をしながらずっと、お互いの
現状を話していた。
ふと、視線は彼の左手に行く。
長いその指にはリングはされていない。
でも、彼が結婚をしていない確証はないし
恋人だって居るかもしれない。
聞いてもいいものか考えていたら、ふいに
彼の方から…
『瞳は…結婚してたりするの?』
そう聞いてきた。
『ううん。
結婚どころか彼氏だって暫く居ないよ。
今は仕事が恋人みたいな感じかな。』
『そっか。』
『譲君は…?』
緊張で心臓が痛い。
何かを聞いて、こんなに返答が怖いと思ったのは
初めてだった。
『俺もそんな感じ。』
そう言って彼がふわりと笑った時、私は心底
ホッとしたんだ。
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