日常

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見なくても分かる。 それは友人からの結婚式の招待状だ。 私は彼の視界から消し去るように、それを テーブルから拾い上げ、バッグの中にしまった。 「冷めちゃう前に食べようっ。」 その手紙の内容には触れないで、何でもないように イスに座れば、彼も黙ってイスに座る。 こういう時、どうしてあげたら正解なのか 分からない。 だから私は努めて普段通りにすることにした。 ここ最近、お互いに増えてきた結婚式の招待状。 年齢的に言えばそれは当然のことだし、友人の幸せは素直に嬉しいのだけどどうしても上手くいか ない。 彼も彼で、私を気遣ってあくまで普段通りを 装おう。 装おっているけれど…私には分かる。 彼が無理をしていることを。 表面上はいつもの穏やかな夕食を終えて お風呂に入ってから、先にベッドへ入った。
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