日常

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翌朝─── 重い瞼を開けると、いつから起きていたのか 彼は私を見つめていた。 「おはよう。」 目の前には今にも謝り出しそうな顔。 だから私は笑って声をかけた。 残業後の激しい行為によって体は気だるい。 だけどそんなことはどうでもよかった。 どこか泣きそうな顔で私を見つめる美しい人。 そっと手を伸ばして、頬に触れれば切なげに 目を細める。 「おはよう。」 やっと返ってきた挨拶にほっとした。 大丈夫だよ。 私は大丈夫だよって、言葉にする代わりに 頬を撫でる。 すると彼は目を閉じた。 その姿はまるで私の温もりを確かめているようで いとおしくて、苦しくなる。 「好き。」 本当はそんな二文字じゃ足りないくらいだけど 何か言葉にしないと気が済まなかった。
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