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日常
「お疲れ様。」
私を会社の外で待っていた彼は柔らかい笑顔で
こちらへ向かって来た。
道行く人はその姿に思わず目を奪われたと
いった風に見つめている。
隣に寄り添って、然り気無くバッグを持ってくれた
彼を私は見上げた。
「そっちもお疲れ様。
うちの会社に来ると遠回りだから、先に帰って
くれてても良かったのに。」
「夜の女の一人歩きは危ないよ。
それに、早く顔を見たかったから。」
毎日一緒に居るのに、私は未だにこれに慣れない。
彼の言葉にはいやらしさや下心なんかなくて
純粋に思ったことを口にしているから、こちらが
照れてしまうことがよくある。
だから、そういう言葉をかけられる度に
私はまるで少女のように胸が高鳴ってしまうんだ。
「私も早く会いたかった。」
素直にそう返すと、彼は目を細めて微笑む。
「帰ろう。」
そして手を差し出してくれるから、私は
その手を掴んだ。
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