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私は、お母さんが、嫌いだ。
“お手伝いはして当たり前。”“テストが80点?もっと頑張りなさい。”
そんな考えばかりのお母さんが私は大っ嫌いだ。褒めることよりもまず怒る。最近褒められたのいつだっけ?そんな考えが頭をよぎり、涙が頬を伝う。
だから私は考えた。
こうなったら、とことん仕返ししてやろう。
四月九日。
私は、一人部屋にこもって作戦を立て始めた。白い画用紙に案を書き出していく。どんな結末になるのか心を弾ませてしまい、頬を引き締めた。実行するのは…そうだな…一ヶ月後にしよう。
四月二十日。
あれから私は、絶対に失敗しない計画を立てた。あとは実行するだけだ。そろそろ準備に取り掛かろう。あ、あと…一人だけじゃできないから、共犯者をつくらなきゃな。
四月三十日。
協力してくれる人が見つかった。妹だ。
絶対に二人で計画を成功させてみせる。
五月四日。
当日まで残り五日となった。
妹と準備を始めた。もう少し早めに始めれば良かったかもしれない。でもまだ間に合う。仕返し、してやらなきゃ。
五月八日。
ついに明日だ。今から胸がわくわくする。さて、どうなることやら…。妹と一ヶ月間頑張ってきた。きっとうまくいくだろう。大丈夫。…最後の仕上げだ。私は黒い食べ物の上に白い粉をかけた。魔法の薬。妹と顔を見合わせて口角をあげる。おまじないまでかけてやった。明日のためにも今日は早く寝よう。
五月九日。
当日。お母さんがスーパーの買い出しから帰ってきた。私は妹と一緒に、走って玄関へ向かった。魔法の薬がかかった食べ物を持って。
お母さんは……お母さんは、涙を流してその場のしゃがみ込んだ。
大成功だ。
家族みんなが大好きなチョコレートケーキの上に粉砂糖をかけた。私と妹で、一から作った。ケーキは焼いたら焦げちゃったけど。
それを誤魔化す魔法の薬、粉砂糖。
私も一回くらいお母さんを泣かせたかった。
仕返しだ。
なんでケーキだけでお母さんが泣いたのかって?
だって今日は、五月九日。
母の日、だから。
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