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シンナーをやめると母と約束してからも、僕は時々だがまだシンナーをすることがあった。
やってはいけない、そう思いながらも誘われると断り切れずまたやってしまう。
だが、僕は別の理由でシンナーをやめることができた。
僕たちの地元はシンナーが禁止という、先輩たちからの伝統がある。
それではシンナーをすればどうなるのか?
それは制裁に遭うことになる。
要は殴る蹴るといった先輩たちからの暴力だ。
情けない話だが、母との約束では止めることができなかったシンナーを、この暴力といった恐怖でやめることができた。
単に暴力と聞けば良いものではない。
だが、そもそも悪いことをしていたのは僕だ。
母はこのことで僕がシンナーを断つことができたことを喜び、先輩たちに感謝していた。
母は言う。
「あんたが顔を腫らして帰ってきても、お母さんは先輩たちのお陰でシンナーやめれて本当に良かった。」と。
僕としても、当時は本当に嫌で怖くてたまらなく、先輩からの着信が鳴るだけでも怯え恐怖を感じていた。
だが、恐怖を感じるようなことがないと僕はやめることができなかったと思う。
意志が弱くて小心者の僕は、当たり前にはやめることができなかったからこそ、僕としても本当に感謝している。
そして、中学校生活も終わりに近付く。
僕もこれから先の進路を考える時期になっていた。
周りの不良仲間たちはほとんど進学しない。
僕はというと、正直何も考えていなかった。
仕事をする気もないし、高校に行くつもりもない。
ただ遊びたい。
それだけだった。
母は、高校に行ってほしい、そう僕に頼んでくる。
だが僕は行きたくなかった。
将来のことなんて何も考えていないし、高校へ行く理由も分からない。
僕が一番優先していたのは「今」という時間。
優先していたというよりも、今のことしか考えていなかった。
「受験するだけしてみようよ。」
母に促され、嫌々ながら僕は高校を受験することにした。
そしてその結果、僕は県外にある私立高校に合格し入学することになる。
母は物凄く喜んだ。
合格発表の日、余りの嬉しさに高校のパンフレットを見てたから。
前述でも書いたが、兄たちは公立の進学校に通い卒業している。
僕が受かったのは、私立で進学校でもなんでもない。
だが、母はそれで良かったのだ。
ただし、母の気持ちとは裏腹に、僕は高校へ行きたくなかった。
これは不良あるあるなのだが、僕は地元を特に大事にし、その友達を一番大事にしていた。
僕が通う高校には地元の友達は誰もいない。
絶対楽しくない、それしか頭の中にはなかった。
だが、母は言う。
「高校に行ったら、そこはそこで友達もできるって!」
母は僕が通う高校の資料を見ながら、体育祭などの行事などを僕に話して、本当に楽しみにしていた。
僕は悩む。
県外とはいっても、家から通える距離にある高校。
帰ってくれば友達とも会えるし、遊ぶこともできる。
我慢して通ってみよう。
そして僕は中学校生活を終え、高校生活が始まった。
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