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個室から出てきた少女は、扉が開いた瞬間激しく瞬きをし、早瀬たちと目が合うと再び扉を閉めた。
「いや、待て」
正確には、閉めようとしたのを、早瀬が無理矢理止めた。
「…………!」
声にならない悲鳴。
まあ、実際見知らぬ男にエレベータの扉を無理矢理開けられたら、恐怖でしかないだろう。
百八十を超える身長を持つ早瀬だから、華奢な少女にはかなりの圧迫感。
「あー、ごめんねー。早瀬、どいて。僕が話す」
横から完全に猫を被った輝が口を挟んだ。
「芦溝由依さん、ココの学生だよね?」
さすが、見た目は“十五歳天才少年”だけあって、Y大の学生なら知らない顔でもないから、輝が柔らかな微笑みを湛えて声を掛けると、少女――由依は少し安心したように輝を見た。
輝と少女はほぼ同じ目線のようで、デカい早瀬から逃げるように輝の傍に近付く。
「えっと。ここは僕の研究室。由依さんは建築学部の七瀬教授の部屋から出て、一階に降りようとしてた。けど、エレベータを降りようとしたらココにいた。ということで合ってるかな?」
輝の説明に、由依が頷く。
「で、それが何故かって説明をしたいんだけど、ここで立ち話するのもなんだから、あっちのソファでお茶でもしながら、でどおかな?」
来訪者にリラックスさせる為、必ず輝はソファで紅茶を勧める。紅茶と言ってもノンカフェイン。香こそダージリンの上品なものがしっかりと漂うが、丁寧に手を加えてカフェインレスにしてある。
この作業は輝がただただ“ココに迷い込んだ人にリラックスしてもらいたいから”という為だけに、時間を使って丁寧に行うのだ。
本当に、早瀬には全く理解の範疇を超えていることばかりを輝はしれっとやっているから、ただの使いっ走りしかできなくても仕方がない。
「さて、由依さん。一応この大学の学生ってことで、僕がやってる研究のことは知ってるよね?」
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