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夫が逝ったのが勇一が手の掛かる幼児期で無かったのは幸いだったのかもしれない。
ただ、思春期を迎えようとする勇一の成長に夫の死が影響しなかったかと言えばそれはない。
家計を一人で支えなければならなくなった私と勇一との会話は減り、成長に伴い寡黙になる彼の心情を理解するのは難しくなっていった。
私の身長を既に追い越し、少年から男の顔つきに変わりつつあるとはいえ、まだまだ子供だ。
私が今いなくなったら彼はどうなるのだろう。
そんな不安が兆す時がある。
陽が傾き闇の比重が増えると私の心も同時に鬱として、悪夢に捕らわれてしまうのだ。
その闇には勇一の将来も含まれていた。
息子に対して笑顔を作るのが徐々に辛くなってきた。
それは勇一が中学三年生になる前から続いていた。
内緒で心療内科に通い睡眠薬を処方して貰っているが、悪夢が部屋をノックすると緊張感で神経が張り詰めてしまう。
医者に打ち明けても、睡眠不足による幻覚、ストレス、心に潜む過去のトラウマが要因の可能性ありと診断を下された。
心身が磨耗していた。
不安を解消する為の答えを求め、アルバムを開いたのかもしれない。
勇一誕生時、顔を真っ赤にして泣く我が子を抱く夫の写真をソッと撫でた。
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