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照明を落とすと一瞬だけ静寂に支配されるが、瞼の裏には残光が焼き付いていた。
画面を下に向けたスマホから漏れる細い光を横目で捉える。
闇の中で強調されたブルーライトが眼球に突き刺さり、朦朧とする意識を覚醒させた。
私はスマホの電源をオフにして、完全に光を消し去った。
視力が役割を失えば、今度は聴力が拡大する。
雨がシャッターを叩く音。
雨でも風でも構わない。
忌まわしい音を消してくれるなら。
キィ
部屋のドアがゆっくりと開く。
絨毯に沈む足音。
身体中が汗ばんで、何度繰り返されても慣れる事が無い。
悪夢としか言い様のない悪夢には。
ベッドの上で身を固くする私を大きな影が包んだ。
スプリングが軋む。
項に迫る荒い息遣い。
パジャマの下に入れられた手が汗の上を滑り、私の乳房を掴んだ。
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