ソウタとコダマ

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そう言って、近づこうとした瞬間、コダマは突然、炎を上げて爆発した。 転がるホイール。剥がれ落ちた虹色の金属タイル。焦げてバラバラになったパレットハンド。溶け落ちたプロペラ。 「うわ、レーザー砲の高温に耐えられなかったのか。限界レベルになっても制御システムが作動しないロボットなんか、完全な失敗作だな。失敗作なら、持って帰ってもしかたないか」 兵士は不愉快そうに、足で残骸を蹴り飛ばした。更に分解しながら、コダマの半球体のボディが緩やかな坂を転がっていく。兵士はため息をつきながら来た道を戻った。 「ガンバ、レ。ソウタ。ガ、ン……バ、レ。モウ、少シ」 耐熱樹脂は溶け落ち、マニュピュレータが剥き出しになっても、ボディのカメラアイだけは震えながら、ソウタの姿を追い、掠れた音飛びの音声を響かせる。 カメラアイに映る少年は、国境の緩衝地帯を越え、柵の破れ目を引っかき傷を作りながら抜けきった。そのまま、奥の隣国の森の中へと姿が消える。森の中には、隣国の国境警備隊がいるはずだ。子どもは必ず保護される。 見届けたコダマはカメラアイを収納するため、樹脂カバーを閉じようとするが、飛び出したままのレンズに引っかかって、カバーは閉じることはなかった。 「……コダマ、ハ、……ズット、ソウタノ、オ母サン……シタカッタ……」 飛び飛びのノイズは乱れ、やがて傷ついたロボットのボディは一瞬振動したかと思うと全ての点滅が消える。ついにロボット機能はモジュール停止し、コダマは完全に沈黙したのだった。
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