ソウタとコダマ

10/14
前へ
/14ページ
次へ
そのときだった。 「ソウタニ、手ヲ、出スナ!」 暗闇の中を、目の(くら)むような閃光と共に金属の(かたまり)が飛び込んできた。いきなり空気を揺るがす連続した振動音が響き渡り、土埃(つちぼこり)が舞う。 気が付けば、少年を踏みつけていた兵士は血まみれで倒れていた。訳も分からずソウタが起き上がると、目の前にはコダマがいる。 少年は動けなくなった。 普段は明滅(めいめつ)しないはずのカメラアイは、熾火(おきび)のごとく不気味に光り、ボディ表面でくるくる回転していた。よく見知った虹色の金属のボディからは、ぽたぽたと真っ赤な返り血が(したた)り落ちる。 兵士の肉片と血がこびりついたパレットハンドには、ネットテレビでしか見たことのない機関銃モジュール。土埃で煙る地面には空薬莢が散乱していた。コダマは銃口の照準を兵士に合わせたまま動かない。 「こ、こいつ、博士が研究していた最新型の軍事ロボットだ。こんなところにプロトタイプが隠してあったのか」 降ってわいたような展開に、生き残りの兵士は逃げようとするが、コダマは機関銃の照準を合わせたまま、離さない。 「マシンガンノ精度ハ100%。逃ゲテモ、無駄ダ」 「こ、殺さないでくれ!」 這いつくばって、涙ながらに懇願する。 「コダマ、止めて!」 震える声で少年が訴えた。コダマの赤く光るカメラアイが少年を見る。 「ソレハデキナイ。生カシテ返セバ、マタ、ソウタヲ、捕マエニ来ル。今度ハ、タクサンデ」 「でも」 ソウタは怯えた眼差しでコダマを見た。コダマはまるで逡巡するかのように動作が止まる。 と、奇妙な物音がして、コダマが振り返ると兵士の姿は消えていた。大慌てで赤外線アイで探索したが、既に気配はない。不思議なことに見つからなくなっていた。遠くへ行っていないはずなのに。 何かが起きている。 「キケン。キケン」 「コダマ?」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加