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そのときだった。
「ソウタニ、手ヲ、出スナ!」
暗闇の中を、目の眩むような閃光と共に金属の塊が飛び込んできた。いきなり空気を揺るがす連続した振動音が響き渡り、土埃が舞う。
気が付けば、少年を踏みつけていた兵士は血まみれで倒れていた。訳も分からずソウタが起き上がると、目の前にはコダマがいる。
少年は動けなくなった。
普段は明滅しないはずのカメラアイは、熾火のごとく不気味に光り、ボディ表面でくるくる回転していた。よく見知った虹色の金属のボディからは、ぽたぽたと真っ赤な返り血が滴り落ちる。
兵士の肉片と血がこびりついたパレットハンドには、ネットテレビでしか見たことのない機関銃モジュール。土埃で煙る地面には空薬莢が散乱していた。コダマは銃口の照準を兵士に合わせたまま動かない。
「こ、こいつ、博士が研究していた最新型の軍事ロボットだ。こんなところにプロトタイプが隠してあったのか」
降ってわいたような展開に、生き残りの兵士は逃げようとするが、コダマは機関銃の照準を合わせたまま、離さない。
「マシンガンノ精度ハ100%。逃ゲテモ、無駄ダ」
「こ、殺さないでくれ!」
這いつくばって、涙ながらに懇願する。
「コダマ、止めて!」
震える声で少年が訴えた。コダマの赤く光るカメラアイが少年を見る。
「ソレハデキナイ。生カシテ返セバ、マタ、ソウタヲ、捕マエニ来ル。今度ハ、タクサンデ」
「でも」
ソウタは怯えた眼差しでコダマを見た。コダマはまるで逡巡するかのように動作が止まる。
と、奇妙な物音がして、コダマが振り返ると兵士の姿は消えていた。大慌てで赤外線アイで探索したが、既に気配はない。不思議なことに見つからなくなっていた。遠くへ行っていないはずなのに。
何かが起きている。
「キケン。キケン」
「コダマ?」
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