15人が本棚に入れています
本棚に追加
祖母の写真に向かって、まだ話しかけているソウタの横を通りすぎて、コダマは台所へ行く。人参、じゃがいも、玉ねぎ。台所にある材料を一通りスキャンし終わると、コダマは料理に取り掛かる。どれも、週に一回だけ出かける遠方の市場で、コダマが買ってきたものだ。今の時代、ロボットのお使いは珍しくない。
「ソウタ、人参ヲ切ルノヲ、手伝ッテ」
コダマが声を掛けると、少年も台所へやってくる。二人は本当の親子のようだ。
「今夜ハ、ソウタノ好キナ、シチュー、デス」
「わあい」
少年は小躍りする。
コダマのボディからパレットハンドが2本伸びると、人間の可動域を越えた動きで、すばやく野菜をむき、ソウタへ渡す。少年の目の前に、積み上がる剥かれた野菜。戸惑いながら、それを不器用に切っていくソウタ。その傍らでは、コダマが炒めるための鍋の準備を始める。
ロボットのコダマは、毎朝決まった時間にソウタを起こし、昼間、ソウタはコダマのそばで、オンライン小学校の授業。授業時間終了後、二人で家の周りを散策した。夕方にはコダマとソウタは、一緒にご飯を作り、ソウタがそれを食べる。夕食後は、ソウタはコダマに宿題を見てもらい、提出してからソウタはシャワー、コダマは洗い物。そして夜が更ければ、二人揃って二階の寝室に上がる。ソウタはベッドに、コダマは充電デバイスへ入って一緒の部屋で眠るのだった。
たった二人だけの他愛なく穏やかな日々。
最初のコメントを投稿しよう!