ソウタとコダマ

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そんな日常の続いたある日―― 春の終わりの風が不穏な夕方だった。家のある森の中を、湿った突風が通り抜け、時折、思い出したように小雨が降った。 一時間ほど前から、遠くで気味の悪くなるような地響きが聞こえていた。それは巨大な獣が近づいてくるかのようで。日頃から目敏(めざと)いコダマは頭部のアンテナを伸ばし、家の外の気配をうかがう。すると慌てた様子でアンテナを収納すると、ホイールを回転させて、部屋の中のソウタにカメラアイを向けた。 目の前のソウタは、いつものようにオンラインで授業を受けている。見慣れたヘッドセット姿。だが、わずかに虹色に煌めいたコダマに気が付く。 「コダマ。なに?」 「静カニ。ソウタ」 半円球体の下の丸いタイヤを回転させて、玄関の扉の窓まで音も立てずに、小さなロボットは近づいた。ボディについているカメラアイの部分を伸長し、外を見る。 「イチ、ニ」 人間が二人。 あろうことか、家の向こうの茂みには武装した男たち。しかも銃を手にしていた。コダマはタイヤを反回転させると部屋の中で後ずさる。 「コダマ、どうしたの? キツネでも来た?」 森に住む動物が、よく迷い込んでくる。 「違ウ。知ラナイ男タチ。ソウタハ、二階ヘ」 「二階?」
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