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「そうだ。帰る前に、もしよければコレに付け替えてくれると助かる」
玄関先で朔也に渡されたのはキャラクターもののキーホルダーだった。
「え? これ?」
猫のキャラクターのイラストがついた小ぶりの箱型のキーホルダーは、前回入れられた盗聴器よりわずかに大きい。
「この前は盗聴器を満紀に無断で入れたけど、今回はちゃんと了解を得たいんだ。それは見た目はキーホルダーだけど、GPSとかも入ってる。俺も高堂家討伐にすぐに動き始めるつもりだが、今日明日で結果はでないだろう。その間に何かあったら困るから、用心のためだ」
「分かった、お守り代わりに付けておく」
鍵を付け替えると、朔也は満足げに頷いた。
「それから満紀のRP《リベンジポイント》は緑子単体Cランクの分だけマイナスになるだろうから」
「分かった。でも高堂家Bランクとの差は?」
「それは俺がカバーする、どちらにしても俺自身の復讐の一助になるからな」
「朔也君は優しいし賢い人なのに、そんなにも復讐したい相手がいるなんて、なんか想像できないけど」
「あるんだよ。満紀が今気にすることじゃないから、もう帰れ。ここからなら迷わず帰れるだろ?」
「うん、学園が見えてる場所なんだから、迷子になったりしないよ」
前のマンションは満紀の塾の近く、今度のマンションは斉蘭の近くで、偶然にしては出来過ぎている。朔也とは何かの縁の糸ででも結ばれているのではないかなんて荒唐無稽なことを考えた。
「またな」
背中を押されての帰り道、疎外感を感じて少し寂しくなりかけたが、朔也に渡されたキーホルダーを目にして心を強くした。私には朔也君がいる、だからもう緑子なんかに決して屈したりしないのだと心に誓った。
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