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「哀れな朔也君がどんな立場にいるかも知らないなんて随分薄情な彼女だこと。それとも彼に信用されてないのかしら? だから本当のことも言えないのかもね」
「哀れって? 養子になったことが?」
「ホントに満紀さんはなぁんにも知らないのね」
「何が言いたいんですか? はぐらかさないで教えてください」
「私の口から言うような話じゃないから、本人から聞くのね。彼女ズラするなら“宮小路家の呪い”の噂くらい知ってなくちゃね」
「だから、彼女なんかじゃないですって」
「助けに駆けつけて貰ってるくせに、白々しい」
「でも、ホントに……」
「ふーん、信用されてないんだ。だから何にも教えて貰えないのかもね」
「……彼が私に言わないのは、きっと私を守るためだと思います」
緑子に自分の事を悪く言われるのは慣れっこだが、無遠慮に朔也の話をされるとカチンとくるのを押さえられなかった。
ピリピリとした雰囲気が流れる中「時田さん、時田さんに用があるって人が来てるわよ」と別の生徒が声をかけて来たので、ドアの方に目をやると読書部の奥澤部長が手を振ってるのが見えた。
状況を察した緑子がヒラヒラと手を振りながら自分の席に戻って行ったので、奥澤部長の元へ向かうと「時田さん、今ちょっといいかしら?」と固い口調で言われた。
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