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前は体験入部の時は満紀ちゃんと呼んでいたのに、今更の苗字呼びにこれから聞く話はあまりいい話にはならなそうだと察しをつけた。
「いいですよ。どうしたんです? 急ぎの用ですか?」
「うん……実はね、時田さんの仮入部のことなんだけど。時田さん、感想文は苦手だって言ってたでしょ? それで私、感想文無しで名前貸しだけでもいいなんて安請け合いしちゃったんだけど、他の部員がそれじゃ不公平だって話になって……」
とそこまで言うと口をモゴモゴさせて言葉を選んでいる様子に
「わかりました、そういうことでしたら仮入部の話はなかったことにして貰ってもいいんです」
と助け船を出した。
放課後まで待たず朝一に来たということは、奥澤部長も早く決着をつけて安心したかったのだろう。どうせ感想文の件は話を切り出すきっかけにすぎず、緑子に敵視されている満紀を入部させる不利に気付いたからに違いない。実際には感想文位、書いて書けないことはなかったが、このまま部長の希望通りに仮入部を取りやめた方が万事丸く収まるというものだろう。
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