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父親のことで周りは大騒ぎしているというのに一見、いつもと変わりないような緑子の態度に、大したものだと満紀は思った。
緑子の高いプライドがそうさせているのだろうが、心中は嵐に違いない。
イジメられっ子の満紀を庇う真似をしてまで完璧なイメージ作りしていた緑子なのだ、父親が斉蘭生と淫行したなんて不名誉な話にダメージを受けていないはずがない。
チラチラと見ていた満紀の視線に気づいたのか
「あら? 満紀さんにまで気遣われるなんて私も落ちぶれたものねー。だけど心配しなくても大丈夫。父と私は別人格なんだから、あの人が何をしようと私の完璧さを損なうものじゃないわ」と余裕の笑みを浮かべて見せた。
いつもならここで安奈や他の側近が合いの手をいれてくるところだが、今日は誰も口を開かない。実に分かりやすい構図だ。朔也の読み通り、緑子グループの結束はもろそうだ。緑子だけを叩き潰せば無力化するかもしれない。
そのトップである緑子は所詮はアイドル、つまり偶像なのだ。その成分のあらかたは美しく夢見勝ちなイメージで出来ている。今までの緑子が傷一つない完璧さを誇っていたからこそ、かすり傷でも目立つものなのだ。完璧でなければ緑子ではない。なぜなら完品でない緑子の代わりは他にいくらでもいる、傷物の緑子はもうオンリーワンではいられないのだ。
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