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「そうかな? だけど、一旦辞めろって言ったのに、後で前言撤回されてもねー」
「その気持ちは満紀にだって理解できるだろ? イジメられる立場ってのは伝染するからな。関われば自分も巻き込まれるかもしれないという不安でみんなドン引きするんだ。そういう心の弱さは誰にもある。満紀自身だってあるだろ? だからそれくらい大目に見てやれよ」
「なんか、朔也君っぽくない」
「どこが?」
「寛容な捉えかたって朔也君っぽくない気がして」
「おいおい、満紀は俺を何だと思ってんだよ」
「それは……」
イケメンで賢くて、気難しいけど優しくて……沢山の表現が頭に浮かんでどこから話したらいいか迷っていると、
「今日のところはもう帰れ。俺は仕事があるから、続きはまた今度な」
と話したりない気分のまま追い返されてしまった。
「わかったよ、またね」
芳江と佳代が家を出てから、夕食作りは満紀の担当になっているので、そろそろ帰り支度をしなければならない時間だったのは確かだが、後ろ髪引かれる思いだった。
―*―-―*―
だるま落としの2段目が落ちたのを知ったのは、その数日後、朝食を食べながらテレビでニュースを見ている時だった。
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