○序章

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もう、終わりにしよう。 これ以上のイジメには耐えられそうもない。 時田満紀(ときたまき)斉蘭(せいらん)学園の旧校舎の屋上の隅から下を見下すと、今まで受けて来た数々の暴力や恫喝の数々を思い出し、ギュッと目をつぶった。 取り壊しが決まっている旧校舎は日中でも生徒が立ち入ることはない。ここから飛び降りて死のうと決めたのは屋上のフェンスの一部が先日の暴風雨で損壊してくぐれるサイズの穴が出来たからだ。その穴のお陰でフェンスを乗り越えなくても、今立っているこの場所に来れるようになった。 遠くに見える港に目をやると、深く息を吸った。 4階建てだから高さは十分なはず。今は夜8時過ぎ、この時間なら生徒もみな帰った後で下を誰かが通る心配もない。覚悟を決めて一歩を踏み出しさえすれば、イジメられる毎日から永遠に(のが)れられるはず。 高所恐怖症の満紀は、できればこんな自殺方法選びたくなかったが、他に良い手が思いつかなかった。電車に飛び込むというのも考えたが、乗客や駅員さんへの迷惑や賠償金を思えば論外だ。だれかに迷惑をかけたいわけじゃない。 そして何より家族には迷惑をかけたくない。 満紀は家族を愛していた。
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