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「お父さん、昨日ね、公園で遊んでると、知らないお姉さんに飴玉をもらったの」
尊は朝食の準備中に一人娘の飛鳥から不気味な話を聞き、息を呑んだ。
ここ数日、近隣の公園で発生した不審者情報が学校からの通知で届いていたからだ。
女児に飴玉を配る若い女。どこの地域にも不審者はいるが、いざ自身の娘が遭遇したとなると、尊は胸の騒めきを覚えた。
「飛鳥、知らない人には近付かない。お父さんと約束したよね?」
「お姉さんの方から来たんだよ。それに、私の事、知ってるって」
「それは嘘だ。お前を騙して近付こうとしているんだよ。寄り道はしないで真っ直ぐ家に帰って来なさい。ブザーはいつも首に掛けておいて」
優しく飛鳥の肩に手を添えた尊だったがその手を払われてしまった。
「家に帰っても、お父さんはいつも仕事で夜にしか帰らないじゃない!」
飛鳥はまだ小学校に上がりたてだが、物心着く頃から学童保育の世話になっており、親のいない時間を多く過ごしていた。
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