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俺はいま、恋をしている。
そして多分、この恋が初恋だ
◇ストーキング◇
ああ。今日もカッコいい
身長が高くて、声が低くて、スポーツができて、嫌味にならないくらいの頭の良さ。
短髪で、黒髪で少し垂れ目、少し大きい口
そしてなんといっても、あの端正な顔つきだ
彼の回りに人が集まるのは、ごく自然なこと
俺が息をするのと同じくらいに自然なことなんだ。
草笛 碧
あおいくん。
初めて彼を目で追うようになったのはいつの頃からだろうか…
俺と同じで女みたいな名前だし、仲良くなれるかな…なんて思った時からだろうか
まあでも、今となってはそんなことはどうでもいいのだ。
ああ、碧くんが今日も笑ってる
なんて爽やかな笑顔なのだろう
碧くん以上に、スポーツドリンクやミントガムが似合いそうな男はこの世にいない。絶対だ。言い切れる
今日はもう授業も終わりだ
碧くんを見ていると1日があっという間
今日の碧くんは、この後部活だ
まだ行って欲しくない
でも、早く行ってほしい
矛盾
碧くんが教室から出て行ってしまう
今日も話しかけれなかった
でもいいんだ。それで
碧くんを見て
碧くんを遠くから感じる
碧くんに触れられなくても
碧くんが触れたものに触れれば
俺は幸せ
それだけで幸せなんです。
碧くんが出て行った後の教室で
1人静かに本を読む
いや、正しくは読んでいるフリだ
内容なんて一つも頭に入ってこない。入ってくるわけがない。俺の頭の中はいつだって碧くんのことばかりなのだから
さあ、早くみんな出て行ってくれ
碧くん以外の不純物などこの教室、いやこの世界には必要ないんだ。
さあ、はやく、はやく、はやく
俺以外、誰もいなくなった教室をオレンジ色の光が染め上げる
手に持った本を閉じてカバンにしまい、教室のカーテンを閉めた。
薄いオレンジの光が入り込む中、一歩、一歩と碧くんの席に近づく
そう、この為だ
この、時間、この、瞬間、この、為だけに
俺は学級委員という面倒臭い役職を手に入れた
放課後の教室で、1人になっても不審がられないために。
教室の戸締りはいつも俺だ
本来は日直の仕事だったり、担任の仕事だったりもするのだが、俺が自らこうしたい。と望んだ
いや、こうでなければ学級委員になった意味などないのだ。
碧くんの机
碧くんの椅子
今日の碧くんの机の中は何が入っているのだろうか
ドキドキする。興奮が止まらない
静かに椅子を引いて、ゆっくりとしゃがみ込み、机の中を拝見
ああ!
やった!
筆箱だ。また筆箱を忘れて行ってくれている
今週に入って2度目
碧くんは爽やかで清潔感があってそして、律儀なのか、机の中に物を入れたままにすることはあまりない。置き勉なんてしない。
たまにプリントを忘れていたりするくらいだ。
だからこんなチャンスを逃さない為に、碧くんのことは全て調査済み。
そっと筆箱のチャックを下ろして、匂いを嗅ぎたい衝動を抑えながら、青いグリップがついたシャーペンを取り出す
すかさず、自分のカバンからチャック付きのポリ袋を取り出し、そっと碧くんのシャーペンを袋の中にしまった。
その袋をカバンの中へ大事にしまい、それと同時にカバンの中から、新品の青いシャーペンを出す。
そうだ。一緒だ
一緒のシャーペンだ
碧くんが持っているものは全て持っている
こうやって碧くんの物をいただいても気づかれないように、全て調査済み
今週の火曜日も筆箱を忘れていたので、その時は蛍光ペンをいただいた。
本当の事を言うと筆箱ごといただきたい。
碧くんの筆箱のチャックを閉めて、そっと机の中にしまう。
誰かに見つかる前に早く帰ろう。
ああ。
大好き碧くん
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