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復讐の後の幸せは永遠に
それから半年の日々が過ぎて行った。
季節は秋になり、対文涼しさを通り越して寒くなってきた今日この頃。
孝治は週に5日はデイサービスに通うようになり、哲司への負担を減らしていた。
仕事から帰り夜は哲司が孝治の介護をしている。
月に3日ほどは、ショートステイと言って短期間の泊りに行っている孝治。
同じ介護を受けている者同士の仲間もでき、前より楽しそうにしている孝治を見ると哲司はホッとしていた。
今日は孝治がショートステイに行っている日で、哲司は仕事を終えてどこかで夕食を済ませて帰ろうと駅前に歩いていた。
病院から駅前までは歩いて10分程度。
日ごろの運動不足にはちょうどいい距離のウォーキングである。
哲司が歩いてくると。
通りのビルから見覚えがある人が出てくるのを目にした哲司。
ビルにはオフィスが入っていて、その中には病院も入っている。
哲司が見覚えがある人。
その人は…
優衣だった。
手紙と離婚用紙を残して、そのままいなくなった優衣。
見るのは半年ぶりだ。
遠目で見たが、優衣に間違いないと哲司は確信した。
ちょっとドキドキした哲司だが、優衣の後姿を見つつ近づいて行った。
交差点を渡るために信号待ちで立ち止まった優衣。
そんな優衣に哲司は駆け寄った。
駆け寄ってくる足音に、優衣は何となく振り向いた。
「あっ…」
ふりむいた優衣を見た哲司は、とても驚いて目を見開いた。
あのしわだらけで、ほうれい線がくっきり出ていた優衣の顔が、しわが消えてほうれい線も消えてとても若々しくなっているのだ。
随分と若返ったような優衣を見て、哲司は驚く反目に胸がキュンとなった。
だが…
なんとなく体系がふっくらしているような感じが受けた。
「優衣…」
優衣の名前を呟いた哲司の目が潤んだ…。
優衣は驚くばかりで言葉が出ないようで、その場で固まっていた。
「…久しぶりだな。…元気にしているか? 」
とりとめない言葉をかけたた哲司に、優衣はそっと頷いた。
「随分と綺麗になったんだな、びっくりしたよ。この近くで、働いているのか?
「…はい…」
「そっか。ねぇ、久しぶりに会ったんだ。良かったら、食事でもしないか? 」
「…いえ…。もう、貴方とは関わる事はできませんので…」
「どうして? 」
「もう、私達は他人ですから…」
そう答えた優衣は辛そうな目をしていた。
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